句集『縞馬』:日本のサファリ<2021年−1> 

 

  句集『縞馬』:日本のサファリ<2021年−1> 


世界的な新型コロナの大流行で、生活環境が大きく変わった。マスク着用が当たり前になり、人の移動に制限で自宅に籠る事を強く推奨されたり・・・・これにより、交通・旅行業者、ホテル、飲食店などは大きな打撃を受けた。

流石にマスクの品不足は無くなったが、リモートワークや授業が行われ人との接触を避ける事が望まれる異様な状況だ。

コロナ以来、海外旅行は出来なくなった。楽しみが減ったのは事実だが、社会全体、特に、学齢児の教育への事を考えると、更に気が重くなる。
ワクチンの接種が遅れた日本だが、4月からぼちぼちと医療従事者、そして、高齢者の順でようやく進み始め、6月になって、我々夫婦も2回の接種を終えた。
そんな中で7月からはオリンピック、そして、パラリンピックの開催が決まった。

世界を眺めると、国際報道の主たる内容として、米国バイデン政権はスタートし、中東の紛争は相変わらず、加えて、ミャンマーの軍事クーデター、香港の国家安全維持法の施行、中国共産党創設100周年など多々あるが、どの国もコロナの話題は尽きない。

コロナの外出自粛で恒例の家族での集まりが無くなったのは残念だ。

行けなくなった海外旅行だが、過去の追体験する俳句で楽しむ。

 

1月号<フィンランド>

林間の湖面に雪の仄明かり  雪しんしんいよよ静かな会議室 

会議後はサウナよ雪の丸太小屋      雪霏々とムーミン谷の道塞ぐ 

雪の夜の音を吸い込む樹林かな 黒々と重機動かぬ吹雪の夜 

オンドルや火酒とキャビアを饗せられ             

 

2月号<ノルウェー・オスロ>

ディスプレイは欠航ばかり雪激し  満室の空港ホテル雪霏々と 

地吹雪や空港ビルで夜を明かす 
凍てる夜やホットワインの回し飲み 

除雪車の連なる昏き滑走路  雪あらばムンクの叫びかき消され 

ニン月の曙光たちまち夕日かな 

 

3月号<ウィーン>

亡命を請う入国者春きざす  春寒やモーツアルトの墓知れず 

第三の男がふたり春コート  春なれやロングヘアーのチェロ奏者 

農民の絵にあたたかきブリューゲル 冴返る聖堂地下のカタコンベ 

春愁やチョコの粒までモーツアルト         

 

4月号<ベルリン>

ベルリンの壁の破片や春来る  壁越えの命の写真冴え返る 

東独の車のろのろ春うらら
春昼や軍靴の並ぶ蚤の市 

壁落ちてゆきかう風のあたたかや 束ね売るソ連の旗や別れ霜


春コート売って帰国のソ連兵

 

5月号<ベニス>

夏空へ唄うゴンドラ高調子  片かげる狭き水路の石の橋 

反り上がるンドラ舳先風薫る  聖五月マルコ広場の鳩群舞 

尖塔を揺らしつ暮れる水の初夏  ベネチアングラスうっすら夏埃 

夏初め仮面の黒目どこを視る 

 

6月号<スイス・ルツェルン>

点ふたつ音なく登る大雪渓  屋根橋の軒の地獄絵薄暑光 

カウベルの忙しき音や風青し 緑さすスイスに四つ言語あり 

氷河湖や岩に瀕死の獅子の像  レマン湖の空へ一直大噴水 

国境は駅のホームぞ風薫る








    富士の写真:湘南シーサイド・藤沢の路上から・芦ノ湖CC

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