怪鳥・コンコルド

句集『縞馬』:日本のサファリ<2020年−4

「波」3月号掲載句<サンディエゴ・ティファナ>

戦艦と帆船の浮く春一湾 

 

白々とおぼろや兵の墓の列 

 

春風やアイツと分かる賓客来 

 

逃げ水の先は異国の曲り道 

 

春レタスたっぷり挟むタコスかな 

 

路地裏にラテンのリズム春うらら 

 

開戦やホテルまるごと冴え返る



「波」4月号掲載句<チチェン・イッツア/メキシコ>

球場に敗者の首級暑冴え返る 

 

囀りや王登壇のピラミッド 

 

畦焼くやユカタンサイザル麻畑 

 

森を抜け陽炎うマヤの神殿へ  

 

ククルカン降臨あらば蛇穴を出る 

 

野遊びや廃墟にマヤの子らの声 

 

生贄を投げし泉を覗き込む

 


「波」5月号掲載句<カンクン・メキシコ>

白ホテルずらりと並ぶ夏岬 

 

長汀へ美女はつば広夏帽子 

 

スカートのひるがえるつど浜涼し 

 

日焼け娘の腕輪の跡の白さかな

 

浜真白空つつぬけ夏の青 

 

風そよと椰子の木陰のハンモック 

 

プライベートビーチセレブの夕涼み

 



「波」6月号掲載句<怪鳥・コンコルド>

離陸する小さき機窓へ大西日 

 

飛ぶ様は怪鳥もよし草矢でも 

 

マッハ越え夏雲あとへ引く速さ  

 

夏至近し時差をぐんぐん喰う如し 

 

成層圏の星屑涼し拾えそう   

 

ハンカチを手早く敷いて氷菓子 

 

機窓より白夜の空を捜しけり  

カンクンにて

マヤ神殿横の球技場の球を通す石の輪(敗者は斬首される)

マヤ神殿↑

春分と秋分の日に年に2度ククルカン降臨のピラミッド

ティファナの町にて

南加州のスペイン統治時代の教会

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