「波」誌2018年10号の作品より

波集から9句

遠雷やビーフシチューを煮込中    清島 俊雄

胸うすき夢二のをんな白菖蒲     緒方 格子 

ほととぎす鳴くも供養の墓じまい   杉下 赫子 

山鳩と分け合う刻や明易し      坂本きみよ

忍冬いつの日よりか泣かぬ女     伊藤真理子  

緑陰や士気を鼓舞して陸上部     上野 和行

夏座敷柱に残る刀傷         酒向  昭

看取る人先ず見舞はねば梅雨寒し   和田 晴子

柿の花咲きたる静寂散る静寂     開米 遊子     

「照もみじ」より   傾ぎ癖つきし案山子の無表情        山田 貴世

「山開き」より    新しきケルン一点山開き          八重樫弘志

「合歓の花」より   書割のごとき運河や蚊食鳥        朝広 純子

潮集同人から7句

蓮田まだ空を映せる余白ある     原口 海人

風鈴は風の吐息に音合わせ      吉村春風子

炎昼や火山灰降る街へ傘さして    松永弥三郎 

地球こそ己が浄土や水藻生ふ     久保田葵美

一幅の美人幽霊あな涼し       中野 淑子

葉桜はデジタル時計過去見せず     禿河とし子

竿ふつて世事遠くゐる鮎の川      稲吉  豊

   撮影:霧野萬地郎(ペルー・クスコ空港にて歓迎の楽団)

撮影:富山ゆたか(鵠沼海岸にて)

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灘集同人より9句

蛇衣を脱ぐ少年の喉仏        君島 京子

献体のぐずぐず決意梅雨ぐもり   西室  登

あぢさゐ忌雨に目覚めて雨に昏れ  富山ゆたか

父の日やゴロゴロ煮ゆるカレーの具 山下 遊児

地下道の出口ぽつかり緑さす    阿部 竹子 

風鈴売り音を担ぎて露人に入る    田中美穂子

地縁あり生家にからむ烏瓜     宇賀いせを

大股の巫女の夏足袋過りけり    鈴木朱鷺女

群れ咲いて魔性仏性水芭蕉     石垣みち代