波集より10句

廃校に迫る山影木守柿          村田 和子

松手入れ長々と説く嫁の前        秦野 方利

つつましく寄付して胸に赤い羽根      杉下 弘之

湯豆腐に凡の一日を了ひけり       小笠原千代子

大手振る足の軽さよ草の花          坂本きみよ

鶴渡る美しき空へとこゑ残し        當間さとこ

つかみ取れと言わんばかりの冬満月     三浦 修子

ふる里が零るるほどに柿届く        工藤加代子

湯豆腐や夫婦戦線異常なし         大谷みどり

栗駒山裾野包みし里の秋         今野やす子     

潮集同人より9句

ウクライナにもありしかや秋夕焼け     吉村春風子

枇杷の種吐き出し老いの顔となり      由田 欣一

戦つづく枯れし曠野に陽が沈む      田邉 幸子  

泣いた児のこぶしが解けて櫟の実     稲吉  豊

自爆せる星の一生熟柿落つ         石井  眞 

本殿へ遷座はじまる月明かり        飯野 深草

鳥渡る岬に白き天主堂           田中 順子

唸り合ふベイ独楽ガチにガキ大将     野口 尚子

数珠の如く夜寒の湖の岸あかり      西室  登

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灘集同人より9句

一大円空に残して鷹わたる        山田ツトム 

水底に空のひろごる鴛鴦の池      長澤 義雄

我ここに戸籍の重み冬隣         澤村いづみ

コンテスト慣れや一座の案山子たち    山田せつ子

良く晴れて人呼んでゐる紅葉山      工藤 稲邨

新米研ぐシャカシャカシャッシャ旨くなれ  千乃 里子


あの家が目安とかかる雪囲い       板坂 歩牛

釣瓶落し庭師早出の早帰り        星野 朋子

捨畑の波打つ黄金泡立草         堀野カヅ子

「波」誌2023年1月号の作品より

撮影:霧野萬地郎:(ベトナム・ハロン湾)
 

「護符破魔矢」より   江の島のどの道ゆくも恵方かな      山田 貴世

「年新た」より     年新た只願ふらく世の平和        管山 宏子

撮影:富山ゆたか