「波」誌2021年11月号の作品より

波集から10句

ぷつくりと怒つてみせる雲の峰      宮川 敏江

仕留めたと思う藪蚊の死んだふり     蓬田 和子 

旧道の幟百年甘酒屋          酒向  昭

やぶからし短所ばかりを子の継ぎて    清水 茂代

顔覆うベストセラーや三尺寝       小林 昭子

戻るもの休むものなく蟻の列        塚越やす子


漂いて位置定めけり蜘蛛の糸       秦野 方利

驟雨来る走る余力のありにけり      大場きよし

都市またも封鎖夏雲湧きつづく      本城  清

八月や猛威振るいしデルタ株       長野 たけ

  撮影:霧野萬地郎         

潮集同人から9句

ひそやかに立秋の風そびら押す     鈴木八洲彦  

夏を病む「ケツパレ」といふ考の声    本郷 秀子

炎天下五輪ゴルフの芝清し       荒野 桂子

芋の露弾きて空の数ふやす       禿河とし子

音沙汰といふ風の吹きそむ残暑かな   田邉 幸子

河骨の一花かかげる沼の黙       石垣みち代

雷落ちて都心爆撃よみがえる      田中美穂子 

夕焼けや「じゃあね」は明日を呼ぶ言葉  山下 遊児

山あぢさゐ水より水のいろをして     富山ゆたか

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   撮影:富山ゆたか

「こつと冬」より     湖渡る鳥の鋭声やこつと冬    山田 貴世

「金秋」より       金秋やこれよりの日日楽しかれ  管山 宏子

灘集同人より10句

萬緑の中に我あり我家あり        工藤 稲邨

一匹が鳴いて一山蟬しぐれ       鈴木喜美子

ひとりにはいづれなるから秋ふたり   緒方 格子

生まれたてなれど正眼子蟷螂      新坂 雅子

梅莚夜の静寂に香の立ちぬ       永井かほる 

抜き捨てし露草又も根を張りて     今野 勝正

手に取りてふりふりしちやう小判草   鴉田 愛子

橋脚に絡む星屑夜の秋         新井 里子

雨が好き夜遊びも好き蝸牛       板坂 歩牛

視て読みて花眼を恃む梅雨籠      山田せつ子