撮影:霧野萬地郎(バオバブの樹とホロホロ鳥)         

   撮影:富山ゆたか(盛岡城址にて)

灘集同人より10句

台風は空の掃除機富士澄めり       西室  登

色変えぬ松三代の波誌かな       鈴木 基之

斬られ役二度出て斬らる秋芝居     井上美沙子

鳴き順の自づととのふ虫の闇       田原梨絵子

秋うらら猫縄張りをパトロール       星野 朋子 

大夕焼背筋伸ばして対峙せり      野口 尚子

江ノ島からかどわかしたる鬼の子ぞ   今井美恵子

なにやかや猫にもの言う暮の秋      遠山 典子

相模野を渡る涼風椅子二脚        長野 保代

海を捨て海がこひしきカタツムリ     佐野しげを

「波」誌2021年12月号の作品より

波集から10句

旦那衆の五つ紋付秋祭          布施なみ子

柚子坊の噛む音あきることのなし      宮沢 久子

倍も生き何をなしたか獺祭忌       竹中 晃子

稲掛や塩梅みては渡す妻         當摩さとこ

時来れば約束のごと曼殊沙華       川島  隆

水澄むや上目遣いの真鯉居て        岡坂ゆう子


水澄むや鯉が鱗をきらめかせ        齋藤まり江

鳥の眼はなわにつるせる干した柿     杉下 弘之

午後の陽を浴びて微睡む女郎蜘蛛     帆川  透

十五夜や甘え擦り寄る迷い猫       伊藤みや子

潮集同人から9句

横須賀といふ軍港の宵月夜       濱口たかし  

まだまだと萎え脚いどむ秋の耕     原口 海人

枯尾花みみづくに化け売られけり    中野 淑子

頑張れとオンブバッタに云ってつみる  由田 欣一

桐一葉落ちて定まる存在感       加茂 一行

泡ひとつ秋の金魚のお留守番      伊藤美也子

日記買ふ書いてぼやきの捨て処     阿部千穂子   

不知火や見て見ぬ人のひとりかな    石井  眞

木犀や托鉢僧とすれ違う        鈴木朱鷺女

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「大根干す」より     大根干す僧の手際に見惚れおり    山田 貴世

「十二月」より      微光得し微塵発光十二月       管山 宏子