波集から10句

げんげ田と空を分けゆく一両車     開米 遊子

春暁や一舟沖へ遠ざかる        飯塚けいじ  

無限大記号お濠の初つばめ       清島 俊雄

耕人の自適の響き空青し         宮川 敏江

轟轟と音も景色の夏の瀧        栗林多恵子 

馬鈴薯植う夜の雨音に寝入りたり    菊地ゆき子

雨上がる囀り更に透きとほり      梅木くに子

花・花・花これぞ水郡線日和       杉下 弘之


馬鈴薯植う近くに元禄津波塚      川島  隆

立ち入れぬ土手の蕨の伸びらかに   小笠原千代子

      

灘集同人より9句

つばめ来る鎖国合戦潜り抜け     板坂 歩牛

書きて名の哀れな虻を殺めけり    坂本 満子

揚雲雀空に広がるコロラチュラ    井上 玲子

少子高齢化水あるところ蝌蚪群るる  鎌田紀三男

ふらここを大きく漕いで風放つ    富山ゆたか 

春惜しむ写らぬ側の子規の顔     阿部 竹子

祇王寺の奥庭深し竹の秋        長野 保代

雪囲とるや一気にさす光       工藤 稲邨

喪の家に明るさのあり春の宵      田原梨絵子

「波」誌2020年6月号の作品より

潮集同人から8句

雉啼けり凡なる日々ありがたや     本郷 秀子  

霾晦コロナウイルスといふ悪魔(デビル)  管山 宏子

ハグ握手禁止事項ぞ花の乱       中野 淑子 

既視感を安売りしてるサクラかな     由田 欣一

春星の近づいてくる涙かな        禿河とし子

蛇皮線や郁子の花垣行きどまり      石垣みち代

崩壊と知りつ現場の白き服        阿部千穂子

海神も夢を見るらむ蜃気楼        石井  眞 

「波」のホームページ・トップへ       前月へ      次の月へ

撮影:富山ゆたか 

「朴一花」より   馥郁と朴の一花やかく生きて     山田 貴世

撮影:霧野萬地郎(パキスタンのデコトラ)