歴史的に、日本に大きな文化的影響を及ぼした国ではあるが、残念なことに、過去のたったの一世紀の日中の関係から捩れた関係が起きている。同じような根っこをもつ人間として、懐の深いこの国へは限りない好奇心を抱く。

ある時、南京大学の教授との会食で、「南京虐殺の博物館への見学を翌日に予定している」と話した所、彼は「人間として是非その場を実見して欲しい」と言われ、それ以上の訴求は無かった。そして、親切にも、翌朝、大学の車を出して使わせてくれた。
この件に関してさまざまに言われているが、この博物館に立てば、いまでもその写真や報道からでも鬼気迫るような実際があったかと寒気を催した。近郊の小中学校の修学旅行のコースにも、この博物館が入っている由、人間としての事実を直視する勇気を持つべきと思った。

70年代は近くて遠い中国だったが、今では、再び歴史的にも、文化的にも親しかった本来の関係になってきた。アメリカから帰任して、1994年に初めて中国へ業界の視察団の一員として、杭州、寧波、上海を訪問した。長江流域の豊かな農村と日本にも馴染み深い旧跡をも見ることができた。
以降、急速に発展を始めだしたこの国へは、返還前の香港も含めて、何度も行く機会を得た。