句集『縞馬』:日本のサファリ<2020年−7> 

7月号<ロンドン>

朝食はゆるりたっぷり弱冷房      似て非なるクィーンズ英語汗ばみぬ

片陰のビルごと曲がるストリート         日盛やロンドン下町珈琲店

晩涼やガス燈点るパブの街       ジョンブルの口髭ビールの泡ゆれる

夏夕べ印度料理へ足延ばす


(ロンドン下町)

89月号<英国、バークシャーにて>

青垣やジャガーぶっ飛ぶ狭き道      三人はニッカボッカー芝青し                    

遠雷や石器時原人の住みし跡       秋近し自家焙煎のハーブティー     

見晴るかすヒースの丘や秋の虹      白着るや無音稼働の新設備


                  麦秋や工場は小さき煉瓦建
 

波10月号<ベルサイユにて>

王庭は左右対称鳥渡る          秋うらら太陽王はバレエ好き

天高し朕は国家のベルサイユ                 秋日濃き鏡回廊シャンデリア

王族は断頭台へ露の玉                    露けしや椅子に王妃のMA

             うそ寒し自ら冠るナポレオン

(新凱旋門より巴里の街)

11月号<巴里にて>

画架多きモンマルトや秋日和         モナリザの笑みはいつまで秋思ふと

髭の濃き焼栗売りやシャンゼリゼ       凱旋門を旋る冷まじ六車線

ベトナムを離れ幾年木の葉髪         秋天へエッフェル塔の双曲線

               身に沁むや牢獄塔を一巡す 


  
                    (冬のストックホルムとクリスマス聖歌隊)

波12月号<ストックホルムにて>

12月号<ストックホルムにて>

雪激しダイナマイトで道拓く          チェーン鳴らし車灯列なす雪の朝         

燭台を手に処女たちの聖歌隊             冬至日の口をすぼめる会議室                    

街灯も賑わう昼の十二月              降りしきる雪は闇より街灯下      

               衛兵の動かぬ目線雪催い



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