「波」誌2019年3号の作品より

「おみな月」より   日差し満つ桃の三月おみな月       山田 貴世

「深き一歩」より   海豹の眼の爛々と氷喰ふ         八重樫弘志

「帰り花」より    冴返る鉈彫粗き薬師仏           朝広 純子

   撮影:霧野萬地郎(イースター島の火口)

撮影:富山ゆたか

波集から9句

稜線は刃のごとし寒波来る       長澤 義雄

檻の鷲その目は遠き山河恋う      矢口 敬子  

夕影に番の朱鷺のゆく刈田      村田黙己春

冬天へ伸ぶものは伸び神の域     杉下 赫子

大根を漬けるひと日よ嫁姑      須田 久代 

芹の香の立ちて故郷の雑煮椀     村田 和子

木枯や風音聞けば尚淋し       鈴木喜美子

手際よき僧の丸める鏡餅       石川 征一

初空をカンバスにして無限大     原  八恵    

潮集同人から8句

ポインセチアとわたしを容れて夜の鏡  小泉 恭子

平凡を積むこそ非凡去年今年      本郷 秀子

ふんだんに蝌蚪を食うてるペリカン鳥  霧野萬地郎 

牛飼ひや仔牛にカイロ付けてやり    太田  翠

雑煮椀加賀麩ちらして私流        中野 淑子

浮寝鳥ひなた日向へ波さそふ      禿河とし子

吾子かとも思ふ一輪寒椿        田邉 幸子

大聖堂ピエタも冴えて人も冴ゆ     阿部千穂子

灘集同人より9句

浮き上がるところ定めず鳰      鎌田紀三男

大白鳥見て来し夜の寝付かれず    畠山 久江

海を出て暫く濡るる初日かな     山下 遊児

臥す母へ開けるカーテン初御空    長野 保代

石垣に伊達の風格寒波来る      遠山 典子 

聖夜劇星となる児は動かざる     富山ゆたか

ぼろ市の聖書しばられ風の中     坂本 満子

木枯を子等それぞれに聴きをるか   山田せつ子

法螺の音のさんげさんげや深雪晴    武田志摩子    

「波」のホームページ・トップへ       前月へ      次の月へ