灘集から10句
落暉いま新藁高う積み了えて 菊地ゆき子
訪ねれば庭より返事菊日和 長野 保代
もぐれ潜れ秘密基地だよ掘ごたつ 酒向 昭
雪催雲押し上げて大鳥居 武田志摩子
土踏まず叩く勤労感謝の日 石渡 道子
梟よ預言者のごと世に染まず 山田ツトム
不器用な筈が器用に松葉蟹 岸 健
寒月光ひとりの影の厳しかり 永井かほる
冬の雷小さな句会立ち上げる 佐藤 榮一
新雪に光る月山豊かなり 工藤 稲邨
波集同人より10句
街中に猿おいまわす文化の日 宮沢 久子
ヴァレリーを気取る講師の黒セーター 岩倉 未央
青空にこれみよがしの懸大根 飯塚けいじ
椿落つポトリと音がしたような 粋 狂 子
茶の花や何処にも行かぬ母に咲く 塚越やす子
冬の夜や入浴剤の溶ける音 濱田 聡子
カオスの世日記帳に買う未来 清水 茂代
歩数のみの冬の伊勢路や仮想旅 蓬田 和子
掘り起こす土塊ほこと冬に入る 坂本きみよ
黄落に埋まる田園調布駅 本城 清
撮影:霧野萬地郎(ダウ舟の漁業と海岸)
「波」誌2022年2月号の作品より
撮影:富山ゆたか
潮集同人から9句
長いながい無蓋貨車過ぐかいつぶり 鈴木八洲彦
寒鯉のシーラカンスとなりにけり 由田 欣一
冬日射すしみじみぬくき人の情 田邉 幸子
大谷選手の沸き立つ会見冬日燦 田中美穂子
女盛りいえ老い盛り水仙花 伊藤美也子
団欒の在りし空家の寒さかな 阿部千恵子
愛犬死すと年賀欠礼葉書来る 石井 眞
児を一頭ふとんの海で捕獲せり 山下 遊児
無住寺の冬日の匂う坂下る 鈴木朱鷺女
「花馬酔木」より 羊村師・泰夫師在す花馬酔木 山田 貴世
「白梅」より 彼の庭に白梅の香仄かなる 管山 宏子