波　掲載句

8・9月号＜イエローストーン＞

熱泥や片陰のない遊歩道　

　　真青なる熱き湖面や秋近し　

虹立てり間欠泉の都度立てり　

　　朝霧やバイソンゆるり丘越え来　

紅葉見て毛鉤投げつつ舟下り　

　　夜の鹿の鳴くや噴井の湯気の中　

夜の鹿の鳴くや噴井の湯気の中　

10月号＜エジソン博物館（NJ）>

秋燈や京都の竹のフィラメント　

　　燈下親しエジソン自筆の設計図　

鵙晴れや録音技師はみな正装

　　蝋管の音のかすれや夜半の秋

爽やかや発明王と自動車王　

　　黄落やモノクロ映画撮影所　

肉声は「メリーさんの羊」秋の霜　

11月号＜ウェストポイント（NY）＞

うそ寒し武器庫に黒き原子爆弾（ファットマン）

　　秋日濃し帽子目深のマッカーサー　

スカーフを振りコーラスの大花野　

　　秋色やハドソン沿いの砦跡

砲身を跨いで子らの秋日和　

　　休日は色なき風の陸士校　

ごろごろと砲弾黒し露寒し

12月号＜大西部＞

荒星やナバホの谷の宿灯り　

　　雪載せて岩浸蝕の不定形　

風花や人も大地も赤き肌　

　　雪道に轍くっきりロッキーへ　

投げ縄で野牛搦める毛皮帽　

　　アパッチの雄叫び来るか虎落笛　

十二月七日またぞろ真珠湾