撮影:霧野萬地郎(アラスカにて)

「波」誌2019年5月号の作品より

「花うばら」より   花うばら雨の匂いの濃くなれり        山田 貴世

「ビブラート」より   リハビリを終えオーロラの丘に立つ      八重樫弘志

「春の旅」より    唄ふかに競りの符丁や桜鯛          朝広 純子

撮影:富山ゆたか

波集から9句

シャンソンのやがてさみしき紙風船  酒向  昭

畦青む始動してみる耕運機      山本 隆之  

産土の四方に一揖春田打つ     中嶋  敦

ひねもすを祈りの色に白椿      伊藤真理子

好奇心勝ちて抜け道春の泥     小笠原千代子 

強東風の砂丘に刻む風の紋      飯塚けいじ

灯を消せば男雛女雛の息づかひ   信乃 美萩

春月の影たゆたへり千曲川      梅木くに子

逆走の出来ぬ人生亀鳴けり     太田 時子    

潮集同人から8句

春あられ雲版叩く音してすぐ     鈴木八洲彦

音もたぬ記憶あやつる春日傘     中田多喜子 

終の美を風にまかせて飛花落花    管山 宏子 

山晴れて雲雀は天へ直進す      濱口たかし

パンに塗る蜂一生分の蜜        由田 欣一

こころいまほぐるるまでを摘み草や  加茂 一行

用件を云い出しかねる春炬燵     石垣みち代 

胸奥の疼きに気づく忘れ潮      石井  眞

灘集同人より9句

磨きても明鏡ならず春愁       石堂 陽子

ニコライの鐘鳴る夕べ梅真白     半田味加棒

一水の動くともなく温みけり     新井 里子

煩悩もわが身の内や四温酒      蜂谷 憲生

啓蟄や番号ありし地下出口      髙橋きよ子 

らふそくは祈りの匂ひ三月来     鈴木 基之

寒鯉や男は背ナで語るべし      山下 遊児

ハチ公の耳のよろこぶ春の風     筒井 洋子

更衣古きこころも脱ぎ置きて     緒方 格子    

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