波集から１０句

折鶴に託したサダコ原爆忌　　　　　峰村　拓三

倒れ伏すともまた勁し秋桜　　　　　　信乃　美萩　　

無事というだけの一日や秋夕焼　　　　土谷捷三郎

久慈川に流れを戻す簗仕舞い　　　　　杉下　赫子

啄木鳥や暗号打電励みいて　　　　　　近藤　　拓　

秋彼岸夫はいつでも弟よ　　　　　　　齋藤まり江　

繰り言を土間のちちろに聞かれけり　　　佐々木照子

冷やかに見上ぐる犬の三白眼　　　　　小林　昭子

欄干の雨のドレミファ涼新た　　　　　　小笠原千代子

種さやを太らせ果てぬ朝顔よ　　　　　三浦　修子

　　　　　　

灘集同人より９句

ひまわりを離れて太陽落ちにけり　　寺田　篤弘

急流に川面の月の流されず　　　　千乃　里子

瀬戸夕焼われ海賊の裔なるや　　　田中　順子

一茶忌や北信五岳曇りをり　　　　　塚本　虚舟

ムーンウォークといふ去り際いぼりむし　山田せつ子　

飼猫のふと居なくなる良夜かな　　　田原梨絵子

産土を訪うも静寂や椿の実　　　　今野　勝正

あさがほの蔓あをぞらと手をつなぐ　石堂　陽子

かぐや姫忘れロマンは月探査　　　　西室　　登

潮集同人から8句

小春日や老いし姉妹の弥撒ベール　　　　朝広　純子　　

刻無惨しじま広ごる冬落暉　　　　　　　管山　宏子

こほろぎの鳴かねば寂し鳴けばなほ　　　吉村春風子　

遠景は呆けすすきの渦ばかり　　　　　久保田葵美

小鳥来るとくとくとくと酒酌めば　　　由田　欣一

天高し象もゴリラもベジタリアン　　　　稲吉　　豊

葉の先の空蟬季節のエアポケット　　　　石垣みち代

曼珠沙華道中駕籠吊る長屋門　　　　　　田中美穂子　