波集から10句

青柿や指輪の重み負ふ覚悟       宮川 敏江

πという無限数列蟻の道        山田ツトム  

青萩や添水の音の透明感        開米 遊子

懸命は少し哀しき蟬の声         菅井 亮太

片陰へ己の影を連れ歩く        飯塚けいじ 

雨来るか里芋の葉の騒ぎ出す      信乃 美萩 

夕闇に兎くつきり盆の月         坂本 弘道

蟷螂の鎌上げ怒る何守る        栗林多恵子


かなかなや哀しき別れ幾人も      渡辺 初子

水遣りの僧の姿の影は秋        関  美晴

      

灘集同人より9句

新酒よし神田須田町そば処     緒方 格子

娘の忌あの日の様にさるすべり   菊池 慶子

白き帆の沖より晴れて土用入り   富山ゆたか

火蛾一つ壁うつ音の我鬼忌かな   外岡六太郎

白雨過ぐたちまち湯気のアスファルト 飯野 深草 

戦争の通りし神社百日紅      鈴木 基之

秘め事を包みきれずに桔梗咲く    西村 弘美

激辛カレーが浮かぶ炎天下の不思議 春本 光洋

馥郁と亡き妻植ゑし百合の花    工藤 稲邨

「波」誌2020年11月号の作品より

潮集同人から8句

夏うぐいす道岐れてもわかれても    鈴木八洲彦  

霧の香や終着駅の灯が濡れて      小泉 恭子

立山の雲に触れたる大花野       荒野 桂子 

秋天へエッフェル塔の双曲線       霧野萬地郎

コロナ禍のつづくわが窓西日濃し     濱口たかし

かなかなやあの世見て来たなどと言ふ  伊藤美也子

怪獣の卵めく朱夏瓦斯タンク      石井  眞

風に道大きく開けて夏料理       山下 遊児 

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撮影:霧野萬地郎(タスマニア・ビシェノの磯にて)

「寺家の里」より   帰るさの夕日背に負い野菊道      山田 貴世

撮影:富山ゆたか